浮世絵の名作を生んだ伝統木版画の技術

江戸の文化の中心に花開いた浮世絵は、人気の役者や遊女、名所などその時代の風俗を描くことで、庶民の間で大流行しました。その鮮やかな色彩や独特な構図は、幕末以降、ゴッホやモネなど印象派の画家をはじめ、世界中の人々に大きな影響を与えました。そして、今なお日本文化の代表として国内外において高い評価を得ています。この評価には、浮世絵を大量生産する手段として発展をした伝統木版画の技術が大きく寄与しています

日本独自の素材と匠の技伝統木版画の美

浮世絵に代表される伝統木版画は、絵師・彫師・摺師の三者と、それをプロデュースする版元による総合芸術です。各分野の熟練の職人技を結集させることでその美は生まれます。山桜の版木、手漉きの和紙、そして水性の絵具など、日本独自の素材を用い、他の版式では表現できない木版ならではの鮮やかな発色と温かみのある風合いを醸し出します。また、浮世絵の制作技術として、美しさと同時に商業印刷ゆえの効率性を求めたことから生まれた簡潔で洗練された独特の省略美が魅力です。

未来、そして世界へ継ぐ伝統木版画の可能性

本財団が保存継承に努める伝統木版画の技術は、浮世絵の制作技術として、常に時代の流行をとらえ柔軟に対応することで多様な表現を生み出してきました。この技術をこれまで以上に魅力あるものとして存続させるためには、現代そして未来においても、各時代を反映した作品を制作し、世界に向けて広く一般へ発表し続けることが重要と考えています。本財団は、国内外で活躍する現代のアーティストと現代の彫師・摺師とのコラボレーションを通して、新たな伝統木版画の可能性を追求してまいります。