第13回 アダチUKIYOE大賞 結果発表!

沢山のご応募ありがとうございました。公募の結果は、下記の通りとなりました。

【 第13回アダチUKIYOE大賞 結果 】

募集期間 2021年8月7日より2021年12月25日まで
募集内容 応募要項(2021年)のページ参照
応募点数 41点 (日本 40点 、アメリカ 1点)

審査委員 小山登美夫(ギャラリスト)

三井田盛一郎(東京藝術大学 美術学部絵画科 教授)
山下裕二(明治学院大学 文学部芸術学科 教授) 敬称略・五十音順
安達以乍牟(当財団理事長)

審査方法

第13回目となった今回は、「現代の浮世絵を描く才能のあるアーティストを発掘する」という趣旨にならい、昨年度同様に制作した作品を紹介するポートフォリオを募集いたしました。

審査においては、応募者の画風や力量、日頃の制作活動の成果に重点を置き、総合的な観点から現代の浮世絵師としての可能性を秘めた方々を選出いたしました。今回の受賞者2名には、主催者との打合せの後、新たな作品の版下絵の作成に取り組んでいただく予定です。

受賞

大 賞 賞金 30万円+現代の職人の技で木版画として制作(完成した木版画を進呈)

榊原 太朗
優秀賞 賞金 15万円+現代の職人の技で木版画として制作(完成した木版画を進呈)

沖谷 晃司
佳 作 賞金5万円

小林 隆之

大久保 如彌

 

【 大賞 】 榊原 太朗

 

 

© Taro Sakakibara

[審査委員のコメント]

日本美術の古典的画題を現代的な場面へと落とし込む手法で描かれた、機知に富んだ作風がまさに浮世絵らしいと審査員全員一致での大賞選出となりました。一見そうとは見えないながらも、浮世絵への深い造詣が読み取れる構図や、精緻な描き込みも高く評価されました。どこか懐かしい猥雑な街並みや、ユニークなキャラクターたちが大変魅力的に描かれており、木版作品となった際には看板の文字なども良い味になるのではないかと期待しています。

 

【 優秀賞 】 沖谷 晃司

 

 

 

© Koji Okitani

[審査委員のコメント]

線描の美しさ、そして質感にこだわった描き込みに注目が集まりました。中でも赤いセーターを描いた作品は、もふもふとしたニットの質感が大変うまく表現されていると高く評価されました。清潔感にあふれていながらも、独特のノスタルジックな味わいがあり、鑑賞者の心を惹きつける絵だと感じました。シンプルな絵作りや柔らかな作風は木版との相性もよさそうで、どのような木版画作品が完成するのか今からとても楽しみです。

 

【 佳作 】 小林 隆之

 

© Takayuki Kobayashi

[審査委員のコメント]

誠実な表現と技術の高さが評価されました。日本画の顔料とアクリル絵具とを併用した独特のテクスチャが魅力的です。色面で構成されており木版との相性も良さそうだと感じたので、今後にも期待したいです。

 

【 佳作 】 大久保 如彌

 

© Naomi Okubo

[審査委員のコメント]

繊細な描き込みと高い画力が評価されました。アラベスク模様のようなパターンを組み合わせて構成された画面が独創的です。もう少しシンプルにまとまれば、木版としての作品作りにも期待できそうです。

 

選考にあたって

[総評]

昨年に引き続きポートフォリオによる審査を行う中で、作家自身の個性や能力をより具体的に把握することができました。審査では、作家その人に焦点を当て、画力や一目見てその人とわかるような個性、木版作品にした際に生まれる魅力、さらなる可能性を感じさせてくれる作家かどうかということが主な評価基準となりました。

本年度は、コロナウイルス感染症の影響もあり、昨年に引き続きチラシ・ポスターの設置は行わず、財団のホームページやSNS、そして公募サイトを中心に広報活動を行いました。

今回、応募件数は41点と昨年より減少したものの、全体的に力作ぞろいだったと感じています。昨年の総評でも触れた通り、木版という表現手段では絵師の描く線の美しさが作品にとって大変重要な要素です。その点において、今年の応募作品にデジタルではない肉筆が多く見られたのはとても喜ばしいことだったと思います。

また今年は、様々なジャンルや画風の作品から受賞者を選出することができました。新たな木版画の可能性を探るという公募本来の目的を果たすことができるよう、今後もいろいろな作風の応募が増えることを願っています。

来年度以降もポートフォリオ審査を継続して行うと同時に、受賞者と制作する木版画が広く一般に評価をされることにより、木版がもつ表現の可能性に応募者の目が向くような公募にしてまいります。