第15回 アダチUKIYOE大賞 結果発表!

「第15回アダチUKIYOE大賞」は、1月26日に行われた厳正なる審査により、以下のように大賞、優秀賞の2名が選出されました。多くの皆様からご応募いただき、ありがとうございました。

【 第15回アダチUKIYOE大賞 結果 】

募集期間 2023年7月22日より2023年12月25日まで
募集内容 応募要項(2023年)のページ参照
応募総数 127点 [居住地]日本(46)、海外(81)

審査委員 小山登美夫(ギャラリスト)

三井田盛一郎(東京藝術大学 美術学部絵画科 教授)
山下裕二(明治学院大学 文学部芸術学科 教授) 敬称略・五十音順
安達以乍牟(当財団理事長)

審査方法

開催より第15回目となった今回も、「現代の浮世絵師としての可能性を秘めたアーティストを発掘する」という趣旨で、個人が制作した作品をまとめたポートフォリオによる募集をおこないました。また今年は郵送以外に、WEBフォームからも応募を受け付けました。

1月26日に全選考委員出席のうえ開催された審査会において、応募された127点のポートフォリオを元に、応募者の画風や制作活動の成果、伝統木版との相性や現代の浮世絵師としての可能性などを総合的に判断し、以下の2名の方を選出しました。大賞・優秀賞を受賞された2名の方々には、この後、現代の彫師・摺師と共に取り組んでいただく新たな浮世絵の版下絵作成を始めていただく予定です。なお、佳作については該当者無しとなりました。

受賞

大 賞 賞金 30万円+現代の彫師・摺師と共に、描いた版下絵を木版画として制作(完成した木版画を進呈)

Jaime Scholnick
優秀賞 賞金 15万円+現代の彫師・摺師と共に、描いた版下絵を木版画として制作(完成した木版画を進呈)

中島 華映
佳 作 賞金5万円

該当者なし

 

【 大賞 】 Jaime Scholnick

 

THE WIG SHOP

 

GAZA 2
© Jaime Scholnick

[審査委員のコメント]

アメリカ合衆国のロサンゼルスを拠点として作家活動を行うScholnickさんは、本大賞において初めての海外からの応募者による大賞受賞者です。棟方志功のファンである言うScholnickさんの作品は、版画的な表現を絵画によって表すという逆説的な試みにより制作されており、それを木版で制作することに面白みを感じました。また、Scholnickさんは1995年から2000年までアートインレジデンスのために福井県今立郡に滞在されており、和紙に対する造詣と愛着の深さも、共に仕事をするにふさわしいと評価され、授賞につながりました。

 

【 優秀賞 】 中島 華映

 

花くだりの休息

 

朝焼けの花水槽

 

© Hanae Nakajima

[審査委員のコメント]

民族衣装などの伝統的な服飾に興味を持ち、大学では日本の服飾文化を学ばれた中島華映さんが描く、現代の衣装を纏った美人画に注目が集まりました。絵筆を使って、和紙に岩絵の具やアクリルなどで丁寧に描かれた作品は、線の表現を得意とする木版技術との相性の良さが期待されたことも授賞の理由となりました。時代の風俗や文化などを映し出す鏡のような存在であった浮世絵と同様に、中島さんが描く現代の服飾や装いが反映された21世紀の美人画の誕生が楽しみです。

 



選考にあたって

[総評]

開催より15回目を迎える今年度は、これまでの郵送による応募に加え、オンラインによる応募も新たに開始しました。その結果、国内46件、海外81件(世界35か国)、併せて127件の応募を受付けました。郵送、オンラインによる応募共に、前回同様ポートフォリオによる審査を行い、作家自身の個性や能力を具体的に把握し、絵師としての可能性、また木版作品にした際に生まれる魅力と可能性を感じさせてくれる作家かどうかを判断しました。

告知方法については、広報のためのチラシ・ポスターの設置も再開し、財団のホームページやSNS、公募雑誌に加え、国内外の公募サイトを中心に行いました。新たにオンラインによる応募を始めたため、応募件数は昨年の47点から3倍近く増加し、特に海外からの応募は昨年より大幅に増加したものの、応募作品には写真、版画やデジタルで制作したものも見られました。木版という表現手段においては、「絵師の描く線のクオリティ」は作品にとって大変重要な要素です。次回も今回同様に、オンラインでの募集を募る予定のため、応募者の数は更に増加することが予測されます。応募者に対し、「絵師の描く線のクオリティ」の重要性と応募作品への的確なガイダンスを周知できるよう、応募要項の整備などに努めていきます。

受賞者と共に制作する新たな浮世絵版画が広く一般に評価されることで、新たな木版の表現の可能性を広げるようなポートフォリオの応募が増え、未来の浮世絵師を広く世界に求めるような公募として発展させられるように尽力いたします。