第17回 アダチUKIYOE大賞 結果発表!

第17回アダチUKIYOE大賞は、2026年2月16日に行われた厳正なる審査の結果、大賞・優秀賞・佳作の計4名の受賞者が決定いたしました。このたびは多くのご応募をいただき、誠にありがとうございました。

 

【 第17回アダチUKIYOE大賞 開催概要 】

募集期間 2025年7月31日より2025年12月31日まで
募集内容 応募要項(2025年)のページを参照ください
応募総数 395点 [居住地]日本(80)、海外(315)

審査委員 小山登美夫(ギャラリスト)

三井田盛一郎(東京藝術大学 美術学部絵画科 教授)
山下裕二(明治学院大学 文学部芸術学科 教授) 敬称略・五十音順

 

審査方法

これまで同様に、本大賞の主旨である「現代の浮世絵師としての可能性を秘めたアーティストを発掘する」に基づき、個人が制作した作品をベースにオンラインフォームと郵送による募集(海外からはオンラインフォームによる募集のみ)を2025年7月31日より2025年12月31日までおこないました(当初2025年12月25日締切り予定でしたが、応募フォームに不具合が発生したため、締切日を2025年12月31日まで延長しました。)
2026年2月16日に審査員3名と本財団理事長出席の上、審査会を開催し、国内外395名の応募作品を元に、応募者の画風や制作活動の成果、また、伝統木版との相性や現代の浮世絵師としての可能性などを総合的に判断し、大賞(1名)・優秀賞(1名)・佳作(2名)の計4名を選出しました。今後、大賞・優秀賞受賞の2名に対し、現代の彫師・摺師と共に制作する新たな浮世絵の制作を進めていきます。

受賞者

大 賞 : 丁子紅子(Beniko Choji)
賞金 30万円+現代の彫師・摺師と共に、描いた版下絵を木版画として制作(完成した木版画を進呈)
優秀賞 : Anuj Shrestha
賞金 15万円+現代の彫師・摺師と共に、描いた版下絵を木版画として制作(完成した木版画を進呈)
佳 作 : 荒井かれん(Karen Arai)、勝倉大和(Hiroto Katsukura)
賞金5万円

【 大賞 】 丁子紅子(Beniko Choji)

 

                                                 破片。                       うちがわ。

 

特別な夜。
© Beniko Choji

[審査員のコメント]

白い肌に切れ長の目、艶やかな黒髪が印象的な女性像を描く日本画家・丁子紅子さん。「日本画を学べば学ぶほど、岩絵具の美しさに魅了された」と語る丁子さんの、シンプルでありながら強いインパクトを持つ画風が高く評価され、大賞に選ばれました。黒・白・赤という限られた色数で作品を見せる手法は、色数や版数といった制約の中で効果的な表現を追求してきた浮世絵とも通じるものがあります。絵師・彫師・摺師という3人のプロフェッショナルの協働によって生まれる伝統木版画。絵師・丁子紅子さんとの協働によって制作される副賞作品への期待が高まります。


【 優秀賞 】 Anuj Shrestha

 

   Study I                                                                                Study III

 

© Anuj Shrestha

[審査員のコメント]

アメリカ合衆国でプロのイラストレーター、漫画家として活動するAnuj Shresthaさん。上下に配置された二つの画面に、シンプルな形と色彩を用いて作品を構成する、その卓越したセンスの良さに審査員の注目が集まりました。ネパールのカトマンズに生まれ、幼少期にアメリカへ移住したShresthaさんは、「二つのイメージを対照的に並べたときに生じる視覚的な対称性、そしてその間に流れる『韻』のようなものに焦点を当てています」と語ります。その作品の構成方法は、浮世絵の精神とも通じるものがあると評価され、優秀賞に選ばれました。


【 佳作 】 荒井かれん(Karen Arai)

 

ビイドロ乙女譜
© Karen Arai

[審査委員のコメント]

前回、第16回に引き続き佳作受賞となった荒井かれんさん。応募作品は全て2025年に制作された新作であり、制作に向き合う真摯な姿勢と情熱が高く評価されました。全ての作品に共通する独特の色遣いも、大変印象的でした。「西洋文化と日本の伝統が交差し、新たな美意識が生まれた大正という短い時代に惹かれ、絵画制作を行っている」と語る荒井さんの思いが、作品からよく伝わってきます。今後さらに自身の画風を確立するべく研鑽を重ね、どこで見ても荒井さんの作品と分かる表現へと昇華されることを期待しています。

 

【 佳作 】 勝倉大和(Hiroto Katsukura)

 

寿限無
© Hiroto Katsukura

[審査員のコメント]

立体的な文字に、建物や動物、食べ物、植物などのモティーフを融合させた、不思議でユニークなイラストレーションを描く勝倉大和さん。文字そのものを立体化して見せる独創的な発想と、その周囲に丹念に描き込まれたモティーフの緻密さが印象的で、すでに独自のスタイルが確立されている点が高く評価され、佳作に選ばれました。応募作品の中では、落語の代表的な前座噺である「寿限無」を題材とした作品が、特に審査員の目に留まりました。今後も文字を軸とした表現をさらに発展させ、いっそう精緻な描写による作品が発表されることを期待しています。


選考にあたって

[総評]

第17回を迎えた今年度は、前年度に引き続きオンラインでの応募を受け付け(日本国内は郵送も受付)、日本から77件、海外から318件、合計395件の応募がありました。応募者の居住国は日本を含め64ヶ国に及び、本大賞が世界に広く認知されてきたことを実感させる結果となりました。

応募作品は、3名の審査員がアーティスト自身の個性や力量を見極めつつ、木版画の絵師としての可能性、さらに木版画として制作された際に生まれる魅力や発展性を感じさせるかどうかを基準として審査しました。審査は、まず全応募作品のプリントアウトを用いて数回に分けてスクリーニングを行い、選ばれた作品について第2次審査として応募者の背景や全応募作品を個別に精査し、最終的に4名の受賞者を選出しました。

今回は、日本国外からの応募数が前年の3倍以上と大きく増加しました。一方で、本大賞の趣旨である「現代の浮世絵師としての可能性を秘めたアーティストの発掘」、すなわち木版画の原画となり得る作品を見出すという意図に対する理解が十分に感じられない応募も多く見受けられたことは残念でした。今後は、分業制によって制作される浮世絵の独特なプロセスや、その中における絵師の役割への理解を深めた上での応募が増えることを期待しています。また、江戸時代の浮世絵には、その時代を象徴する多様な要素が内包されている点も、応募作品を選ぶ際に意識すべき重要な観点といえるでしょう。

そのような観点から、今回受賞した4名の作品はいずれも、浮世絵の絵師となり得る可能性、作品に込められた明確な意図、そして木版として制作された際に魅力が一層高まることが期待される原画としての条件を備えていると評価されました。大賞および優秀賞を受賞された2名のアーティストには、今後、伝統的な木版技法を継承する技術者との協働による制作に取り組んでいただくこととなります。そのコラボレーションから新たな浮世絵が生み出されることを、大変楽しみにしています。

次回以降の応募者には、本大賞が求める作品の意図をより深く理解した上で応募に臨んでいただき、その経験を通じてアーティストとしてさらなる飛躍を遂げられることを期待しています。

<審査風景>