第8回(平成28年)アダチUKIYOE大賞 結果発表!

沢山のご応募ありがとうございました。公募の結果は、下記の通りとなりました。

【 第8回アダチUKIYOE大賞 結果 】

募集期間 2016年10月上旬より2016年12月25日まで
募集内容 応募要項(2016年)のページ参照
応募点数 28点

応募者データ [居住地] 日本、ドイツ

選考委員 小山登美夫(ギャラリスト)

三井田盛一郎(東京藝術大学 美術学部絵画科 准教授)
山下裕二(明治学院大学 文学部芸術学科 教授) 敬称略・五十音順
安達以乍牟(当財団理事長)

審査方法

今回は「街」というテーマを設け、作品を募集しました。8回目を迎え、応募者それぞれがテーマを解釈・表現した作品が見受けられました。「街」という幅広いテーマの難しさもあったためか、前回より応募者数の減少がありましたが、美術大学出身者やデザイン等を職業とした専門性の高い応募者が増えたこともあり、全体的なレベルの向上を感じることができました。
前年同様、応募作品①で基本的な選考をした後、応募作品②(ポートフォリオ)により重点を置いて総合的に審査し、現代の浮世絵師としての可能性を秘めた方々を選出いたしました。
今回の受賞者2名には、主催者との打合せの後、新たな作品の版下絵の作成に取り組んでいただく予定です。

受賞

大 賞 賞金 50万円+現代の職人の技で木版画として制作(完成した木版画を進呈)

 今井 鉄朗 「夜のやすらぎ」
優秀賞 賞金 20万円+現代の職人の技で木版画として制作(完成した木版画を進呈)

 沖野 愛
佳 作 賞金5万円

 近藤 智美 「メス猫のなわばりはせまい(新宿十二景)」

 櫻井 尚 「行き交う人々」

 

【 大賞 】 今井 鉄朗

今井鉄朗

応募作品① 「夜のやすらぎ」

 

応募作品② より

今井鉄朗

© Tetsuro Imai

 

[選考者のコメント]

無駄な線がなく省略の美しさが引き出されており、審査員の目を引いた。シンプルな線で浮き上がる立体感と構図の面白さが版画にした時の魅力を想像させる。ポートフォリオの中のトイレで煙草をふかす女性の絵は現代の街の姿を巧みに切り取っており、今までの版画にはなかった画題で面白いものになりそうである。

 

【 優秀賞 】 沖野 愛

沖野愛

応募作品①

 

応募作品② より

沖野愛

© Ai Okino

 

[選考者のコメント]

素朴な画風で可愛らしい作品。カラフルな色遣いで人の表情や建物の様子など細かく描写しており、「街」というテーマに相応しい。ただ応募作品には固さがみられ、ポートフォリオの中で見られる伸び伸びとした筆遣いが抑制されていて残念。あまり意識しすぎず、素直かつ自由な発想で表現をしていってほしい。

 

【 佳作 】 近藤 智美

近藤智美
 

(左)応募作品① 「メス猫のなわばりはせまい(新宿十二景)」/(右)応募作品② より © Satomi Kondo

 

[選考者のコメント]

作家が住んでいる街を現代的に、独自の画風で表現した作品で審査員の注目を集めた。高い画力で肉筆作品としての完成度は高いが、版画になった際の魅力の薄さを感じた。

 

【 佳作 】 櫻井 尚

櫻井尚
 

(左)応募作品① 「行き交う人々」/(右)応募作品② より © Makoto Sakurai

 

[選考者のコメント]

構図がユニークで、魅力的。作家活動歴も豊富で、安定感のある画力が感じられた。

 

選考にあたって

[総評]

今回の受賞作は、与えられた「街」というテーマに沿った作品を独自の世界観で描くことのできる、絵師としての才能を持った人材を選びました。時代を映す街の情景やそこに住む人々の表情など、それぞれの作品に特徴が見られ、木版画になることでその魅力をより伸ばせると思われるものを評価しました。

応募作品全体において、与えられたテーマや浮世絵の版下絵になるということを意識することにより、各応募者のもつ個性が失われている作品が多く見受けられました。一方、応募作品②のポートフォリオは、応募者の個性や画力が発揮されたものが多かったため審査の中心にしました。

上記のことを踏まえ、来年度以降は日々の制作活動を重視し、これまで以上に絵師としての才能を持った方を発掘できるよう、ポートフォリオによる審査・募集へと改善をする予定です。

 

審査風景