第14回 アダチUKIYOE大賞 結果発表!

「第14回アダチUKIYOE大賞」は、1月26日に行われた厳正なる審査により、以下のように大賞、優秀賞、佳作の3名が選出されました。多くの皆様からご応募いただき、ありがとうございました。

【 第14回アダチUKIYOE大賞 結果 】

募集期間 2022年7月26日より2022年12月23日まで
募集内容 応募要項(2022年)のページ参照
応募総数 47点 [居住地] 日本、韓国、カナダ、アメリカ、北マケドニア

審査委員 小山登美夫(ギャラリスト)

三井田盛一郎(東京藝術大学 美術学部絵画科 教授)
山下裕二(明治学院大学 文学部芸術学科 教授) 敬称略・五十音順
安達以乍牟(当財団理事長)

審査方法

開催より第14回目となった今回も、「現代の浮世絵師としての可能性を秘めたアーティストを発掘する」という趣旨で、例年通り個人が制作した作品をまとめたポートフォリオによる募集をおこないました。

1月26日に全選考委員出席のうえ開催された審査会において、応募された47点のポートフォリオを元に、応募者の画風や制作活動の成果、伝統木版との相性や現代の浮世絵師としての可能性などを総合的に判断し、以下の3名の方を選出しました。大賞・優秀賞を受賞された2名の方々には、この後、現代の彫師・摺師と共に取り組んでいただく新たな浮世絵の版下絵作成を始めていただく予定です。なお、佳作については以下の1名が選出されました。

受賞

大 賞 賞金 30万円+現代の彫師・摺師と共に、描いた版下絵を木版画として制作(完成した木版画を進呈)

小林 隆之
優秀賞 賞金 15万円+現代の彫師・摺師と共に、描いた版下絵を木版画として制作(完成した木版画を進呈)

加藤 正臣
佳 作 賞金5万円

野々 なずな

 

【 大賞 】 小林 隆之

 

 

© Takayuki Kobayashi

[審査委員のコメント]

小林隆之氏は昨年「色面で構成された作品は木版とも相性が良く、今後にも期待できそう」と言う選考委員の声を集め、佳作を受賞されましたが、今年は更なる挑戦と飛躍を経て、見事大賞の受賞となりました。今年のポートフォリオでは、単純でありながらも、的確に色の効果を発揮させる色面の構成力が高く評価されました。モノクロとビビッドな色彩とのコントラストが美しく、日本画の顔料とアクリル絵具とを併用した独特の質感が面白い作品です。氏の作品を構成する個性的な色面が、木版という表現技法のなかでどのような表情を見せてくれるのか、浮世絵版画としての作品の完成が楽しみです。

 

【 優秀賞 】 加藤 正臣

 

 

 

© Masaomi Kato

[審査委員のコメント]

他の応募者には無い、洒落たユーモアにあふれる作品に注目が集まりました。『クスッ(笑)』をテーマに、鑑賞者を笑顔にしたいという思いを込めて制作されたという作品は、誰もが気軽に楽しめる娯楽であった、江戸時代の浮世絵にも通じるようなエッセンスが感じられます。この後制作される作品は、版画らしい面白みをもった、現代の浮世絵と呼ぶにふさわしい作品として完成するのではないでしょうか。木版を意識した絵づくりや、木版との相性も良いであろう透明感ある色彩も選出の理由となりました。

 

【 佳作 】 野々 なずな

 

© Nazuna Nono

[審査委員のコメント]

水彩による丁寧な彩色と素直な表現、そして色の美しさに評価が集まりました。既に確立されている独自の技法と等身大の表現で描き出されたどこか懐かしいような風景は、実際の作品を見てみたいと思わせられるような魅力にあふれています。

 

選考にあたって

[総評]

昨年に引き続きポートフォリオによる審査を行い、作家自身の個性や能力を具体的に把握することができました。審査では、作家その人に焦点を当て、純粋な画力や、一目見てその人とわかるような個性、木版作品にした際に生まれる魅力、さらなる可能性を感じさせてくれる作家かどうか、といったことが主な評価基準となりました。

本年度は、コロナウイルス感染症の影響もあり、昨年に引き続きチラシ・ポスターの設置は行わず、財団のホームページやSNS、公募雑誌に加え、国内外の公募サイトを中心に広報活動を行いました。

今回、応募件数は47点と昨年より増加したものの、応募作品にはデジタルで制作したものが多く見受けられました。木版という表現手段においては、「絵師の描く線のクオリティ」は作品にとって大変重要な要素です。その点で、今回応募いただいたポートフォリオに肉筆作品が少なかったことは残念に思います。

今年は昨年に続き、様々なジャンルや画風の作品から受賞者を選出することができました。新たな木版画の可能性を探るという公募本来の目的を果たすことができるよう、今後も「浮世絵」という言葉に縛られず、国内外からいろいろな作風の応募が増えることを願っています。

来年度以降もポートフォリオ審査を継続して行うと同時に、さらに多くの応募が集まるよう、より良い募集方法を模索していきたいと考えています。また、受賞者と共に制作する新たな浮世絵版画が広く一般に評価されることで、新たな木版の表現の可能性を広げるようなボートフォリオの応募が増え、未来の浮世絵師の発掘につながるような魅力あふれた公募となるように尽力していきます。