第8回アダチUKIYOE大賞受賞者の木版画作品が完成!

UKIYOE大賞
昨年、アダチUKIYOE大賞の大賞と優秀賞を受賞したお二人の木版画がこのたび完成しました!いずれの作品も、財団の技術者育成事業で研修を終え、現在職人見習いとして頑張っている若手の彫師・摺師が担当いたしました。今回、大賞をとられた今井鉄朗さんが新たに書き下ろしたオリジナル木版画「都会の隙間」が完成するまでの制作の様子をご紹介してまいります。 今回、彫を担当したのは今年4月で4年目に入った中澤博美。元々大学で美術史を勉強していたことから浮世絵に興味を持ち、4年生の時に財団のインターンシップ研修に参加。彫師の研修生を経て現在は、練習彫の他、親方や先輩が担当する作品の色板の彫などを手伝うことで技術を磨いています。今回、アウトラインを彫るところから色の部分の版木まですべての工程を彼女一人で担当してもらいました。
彫り
伝統木版画の制作において、骨格となるのが絵師の描いたアウトライン。彫師は、小刀一本で絵師が描いた線を忠実に、そしてより美しくなるように彫りあげなくてはなりません。大賞の今井さんの作品は、女性の描写やトイレの落書きなど細かい線で描かれた部分も多く、苦労も多かったのではないでしょうか。
中澤曰く、「失敗が目立つスッキリとした絵なので、常に気が抜けなかったです。でも、綺麗な線だったので、迷わず気持ちよく彫れました。アウトラインで工夫したのは、背景の落書きと人物を彫分けたところです。人物は線に強弱を持たせて立体的に、一方落書きは、線の隅まできっちり彫り平面的に彫ってみました。」彼女が彫って完成させた主版(おもはん)がこちら。作品のイメージが浮かび上がってきました。
版木
この後、色板も彫り、すべての版木が完成しました。今回初めてすべての工程を一人でやった中澤は、「絵の全体像や摺り上がるまでの工程を考えるのが、これまでの先輩たちのお手伝いとは違い大変でした。全体と細部を同時並行で考え、切り替えながら作業ができるようにこれからも頑張りたいです。」とコメントしてくれました。
そして、中澤同様、研修制度を経て職人としての道を歩み始めている摺師山田咲が大賞の今井さんの原稿をもとに、一色ずつ摺りあげていきました。
摺り 校正
校正では、背景の色や煙の線の濃淡など、いくつかのパターンに摺り分けて、絵師の今井さんにご確認いただきました。今井さんのご意向を踏まえた修正部分を反映して、ようやくこのたび完成いたしました!今井さんにもとても喜んでいただきました。
今井鉄朗「都会の隙間」
絵師そして、彫師、摺師の各々が技を駆使して、素敵な作品が仕上がりました。是非、実物を見ていただきたく、目白常設展示場にてお待ちしております。
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